ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

千利休になるかもしれない「こんまり」さん

『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌に、片付けコンサルタントのこんまりこと近藤麻理恵さんの記事が載っていました。

 

記事中では、「こんまりメソッドでは手持ちの本を30冊にしなくてはいけない」という情報の真偽を確認し「すべてがときめくなら捨てなくてよい」というお墨付きをもらった他、『人生がときめく片付けの魔法』がこれまで約40か国語に翻訳され、全世界で1100万部を超えるベストセラーになったと紹介しています。

 

こんまりさんは、家族ともに2016年にアメリカに移住。現在までに全世界で230名の認定コンサルタントを育成して片付けサービスを提供する他、最近ではNetflixのシリーズ番組でも大成功を収めています。

 

その余波を受け、こんまりさんはここシンガポールでも有名で、友人との普段の会話の中でも「Konmariのtidying methodが...」という話題がときどき出てきます。

 

昔オノヨーコ、今コンマリと、海外で名前と顔が一致する、まさに旬の日本人といったところ。

 

個人的には日本でこんまりさんが有名人になった頃、すでにシンガポールで過ごす時間が圧倒的に多くなっていたため、本を読んだこともTVや動画でも観たことがなく、かろうじて顔だけ知っている程度でした。

 

遅ればせながら、今回、英語の番組をいくつかYoutubeで観てみたのですが、

 


Ellen and Ellie Get Organized with Marie Kondo


Marie Kondo Helps Jimmy Kimmel Tidy Up

 

自前の番組はもちろん、次々とアメリカの著名トーク番組に出演し、早口の日本語とおなじみのボディーランゲージで堂々こんまりメソッドを紹介しています。

 

このような彼女の活躍を観察していて思い出したのが、茶道の裏千家。

 

茶道の世界では、以前は千利休直系とされる表千家の勢力が圧倒的に強かったのですが、現在では裏千家がその倍以上とも言われる弟子の数を誇ります。

 

その成功の裏には、経営危機を乗り切るために多様な教本や機関誌の出版を行ったり、ハワイを皮切りに海外にくまなく支部を作っていったり、学校や団体などに茶道教室を開いてネットワークを拡大したりと、単なる伝統の継承にとどまらず、常に新しい普及チャネルを開拓していった経緯があります。

 

同様に、ただの片付けにすぎない(失礼!)こんまりメソッドが10年近くも旬の話題として保持され続けてきた背景には、多様な言語での本の出版はもちろん、認定コンサルタントの育成、TVやネット配信などのマスメディアの活用、ウェブコンテンツの制作と普及など、リアルとバーチャル織り交ぜた果敢なマーケティングの実践があります。

 

こんまりさんは、Netwlixの続編があるとすれば、米国内ではなくモンゴルのテントなど未知の場所でしたいと意欲をみせているそうですが、アメリカで成功を収めた後はさらにアジアなど他の市場へのビジネス拡大を狙っているともとれる発言です。

 

茶道は平たくいえば「抹茶を作って飲むだけ」の行為を「わび・さび」の哲学にまで発展させたレクリエーションの一つですが、こんまりメソッドもまた「ただの片付け」を「人生を有意義に楽しむための活動」と定義し直し、そのメソッドの普及に努めてたことにより、ここまでの人気を獲得できたのだと思います。

 

その背後には、こんまりさんとその夫のしたたかなビジネス戦略はもちろん、何よりも、こんまりメソッドを世界的に普及させる、という強烈な使命感があるのではないかと感じます。

 

今後、こんまりさんがこのまま片付け教祖への道を邁進し、「片付け道」の始祖として千利休のような存在になるのか、とても興味深くみています。