ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

書評:”The Practice" オーディブル版 ~ クリエイティブな仕事をしたい人のための45か条

amzonオーディブルを始めた。

 

記念すべき第一冊目はSeth Gordin著”The Practice"。

 

英語の本にしたのには理由がある。

 

日本語の本と違い、英語の本を読むには時間と忍耐力が必要だ。

 

わからない単語は辞書で調べなければならない。Kindle本だと単語が内臓辞書に直結しているので多少は速いけれど、それでも本文から辞書に跳ぶことで思考の流れがいったん中断される。元の文脈に戻るまでに時間がかかる。そのためのエネルギーも必要だ。

 

まだ語彙力が少なくて日本語の本が自在に読めていなかった、でも大人が読む本を読みたくてしかたなかった自分の小学校高学年や中学生の頃はどうだったかというと、もちろん辞書は引いたけれど、知らない語句が出てきてもけっこう飛ばし読みをしていた。テレビやラジオでも同じ。

 

つまりオーディブルは(英語ネイティブでない人たちにとって)そういうものだと考えればいいのではないか?

 

母語の日本語と違い、ほとんどの人にとって外国語の本は100%意味が正確に把握できるわけではない。また、テレビやラジオと同じで100%それに集中できるわけではないので聞き逃すところも出てくる。

 

でも、何かをしながら(私の場合は1日1万歩を目標にしているウォーキング)聴くことができるし、テレビやラジオと違い気になったり理解できなかったと感じた個所を何回も聴き直せる。

 

何より良いのは、自分で読むのと違って途中で投げ出すことなく最後まで読み上げてくれるところだ。つまり、苦行のような忍耐をしなくても、100%完璧にわからなくても、とにかく英語の本を読み終えることができるのがオーディブルの最大の利点といっていいと思う。

 

Podcastもそのあたりの感覚は同じ。そもそもこの本を購入した動機もこのPodcastの番組だった。

Design Matters with Debbie Millman: Seth Godin on Apple Podcasts

 

このインタビューによれば、ゴーディンさんのブログのポストはすでに7,500記事にのぼるそうだ。毎日休まず書いたとしても20年以上続けているわけで、驚異的な持続力というしかない。

 

クリエイティブワークに限らず何事にも通じる黄金律ではあるが、効果が出るまであきらめずに続けること(ブログでもPodcastでも初期の読者や視聴者はせいぜい5人とゴーディンさんは断言する)は成功の鉄則だ。

 

歴史上どんな高名な野球選手でも打率は3割代。つまり6割以上は失敗している。逆に言えば3割のヒットを打つためにはヒットしない6割の打席に立たなければいけない。成功者とそうでない人の違いは(アメリカの大新聞で作品を発表している漫画家に喩えて)この6割にあるのだ。

 

この本の副題の「Shipping Creative Work(クリエイティブな仕事を発表すること)」にあるように、本書のテーマはブロガーや、ユーチューバーや、デザイナー、漫画家等々、クリエイティブな仕事をしたいと考えている無名な人たちが、それで生計をたてるためには何をしたら良いかというアイディアとヒントを提供してくれる。

 

ゴーディンさんはマーケティング本の著作家及びセミナー講師として世界的な名声を博しているが(すでに著作が20冊もありその多くが邦訳されている)、世界的ベストセラー作家の彼が必要だと言う読者はたったの1万人。

 

これだけの固定ファン(読者やセミナー受講者)がいれば生計がたてられる。万人受けする必要はない。だから、自分の仕事にとって重要だと考えることを批判を恐れずに追及しろ、というのがこの本の最初から最後まで一貫する彼の主張だ。

 

私のような弱小ブロガーにとっては誠に有難い啓示である。

 

さらに彼が繰り返し説くのは、決してクオリティを落とすな、ということ。

 

クオリティを落とさず自分の作品を作っていくには、良いクライアントをみつけること。良いクライアントは要求が厳しいので自分の仕事のレベルを引き上げてくれ、さらにその仕事に対する報酬も高い。クラウドワークで時給3ドルの仕事を発注するクライアントの仕事をしていたら、いつまでたっても自分の仕事のレベルは時給3ドルにとどまるしかないだろう。

 

どちらを選ぶかはその人の決断による。

 

その他にも多くの示唆や気づきを与えてくれる本だった。前出のPodcastのホスト、Debbieさんはamazonの2つのアカウントを使って2冊分を購入し、メモのハイライトを全体を23%したという。

 

彼女が特に感銘を受けたというある章「45 ways we sacrifice our work to our fear(恐れを克服するための45か条)」には、「他人がそれを発展させることができるような作品は発表するな」「インスピレーションを得たときにだけ仕事をしろ」「完璧主義と質を混同しろ」「最先端の知識からは一歩遅れろ」など、少し違った角度からのアドバイスも大量に含まれていて考えさせられる。

 

新年のこの時期は1年の計画をたてるとき。私の今年の目標にはオーディブルでもっとたくさんの英語の本を読むことも入れた。約5時間半で聴き終えられるこの本は、新年の目標をたてる際の良い参考書になるだろう。