ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

次のコロナ禍を引き起こさないために私たちができること

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The next big human pandemic—the next disease cataclysm, perhaps on the scale of AIDS or the 1918 influenza—is likely to be caused by a new virus coming to humans from wildlife. 

人類が次に経験する大きな疫病―次の激変をもたらす疾病は恐らくAIDSか1918年のインフルエンザ規模になるーは、野生動物から人間に感染したウィルスによって起こるだろう。

 

HIVやエボラ熱などの感染症取材を長年にわたり続けてきた科学ジャーナリスト、デヴィッド・クワメンの2012年の著書『スピルオーバー』は、コロナウィルスによる厄災到来を正確に予測していた。

 

この中で彼は中国南部の洞窟に住む蝙蝠のウィルス(実際に中国の学者たちが2017年に雲南省で採取したウィルスについての研究を発表)が人に感染する可能性を指摘。このウィルスは現在のCovid-19ウィルスと97%同じ構造をもつという。

 

世界の感染症学者やジャーナリストなどの専門家たちからすれば、今回のコロナ禍は想定外とはほど遠く、当然予想されたことだったのである。

e360.yale.edu

 

 にもかかわらず、世界の行政府がCovid-19発生に先立って何の備えも行ってこなかった怠慢を彼は厳しく非難する。ビル・ゲイツ氏が数年前にコロナ感染症の到来を予言していたとネットで話題になったが、その程度のことは感染症業界では常識であり、各国政府や米危機管理局の感染対策セクションも当然知っていた。しかし警告を真剣に取り合わなかった行政府の姿勢が今日の大混乱の元凶となったのだ。

 

野生動物がもつウィルスは150万種類以上あると考えられており(特に哺乳類の種の4分の1を占め、18~20年と寿命が長く集団生活をして集団内でウィルスを拡散する蝙蝠は各種ウィルスの宝庫)、巨大なウィルス貯水池を形成している。そこから何かの拍子にウィルスがこぼれ落ちたとき(spillover)、未知のウィルスが野生動物から家畜に飛び移り、(もしくは直接)人間に感染を広げるという。

 

つまり、今回のコロナ禍はそのほんの一例にすぎず、将来的にあらゆる種類の感染症が野生界から人間界にもたらされる可能性が非常に高いということだ。クワメン氏は、今後10年に一度は今回のコロナ禍のようなウィルスによる大掛かりなパンデミックが繰り返されるだろうと予言する。彼の警告はこれまでの例を拾っても控えめにすぎるくらいだ。

 

ボリビア出血熱、ボリビア、1961年;マールブルグ病、ドイツ、1967年;エボラ出血熱、ザイール及びスーダン、1976年;H.I.V.、ニューヨークとカリフォルニアで発見、1981年;ハンタウィルス、米国南西部、1993年、ヘンドラウィルス、オーストラリア、1994年;鳥インフルエンザ、香港、1997年;二パウィルス、マレーシア、1998年;ウエストナイル熱、ニューヨーク、1999年;SARS、中国、2002-3年;MERS、サウジアラビア、2012年;エボラ出血熱再来、西アフリカ、2014年

 

しかしただ手をこまねいて次の厄災を待つだけではなく、私たちが多少なりとも被害を軽減するためにできることがないわけではない。蝙蝠を筆頭とするウィルスの宿主である野生動物取引禁止は最も手っ取り早い方法であるが、それ以外にクワメン氏が推奨するのは以下の3点だ。

 

1.できるだけ肉を食べない。

私たちは野生動物の生息環境である熱帯雨林や森林を切り開いて牧草地を作り、家畜を飼育する。宿主が減少したウィルスは家畜に乗り移り、そこからさらに人に乗り移っていく。

 

地球上の陸地のうち居住可能なのは全体の71%。そのうち半分が農業に使用されており、さらにその77%が牧畜用だ。つまり、地球上の全陸地の3割近くで家畜が飼育されていて、アマゾン森林伐採や焼き畑農業により拡大を続けている。ここが野生動物から人にウィルスが乗り移るステップアップ地帯であり、食用肉の流通を減らすことによりこの面積の拡大を阻止できる。

 

2.できるだけ旅行をしない。

ウィルスは人に感染し、飛行機に乗って世界に拡散する。1999年にやはり中国で発生したコロナウィルスが引き起こしたSARSがアジア内にとどまったのに対し、今回のCovid-19が世界中で猛威をふるったのは、発生地である中国から大量の中国人旅行客が世界に散らばってウィルスを拡散したことが最大の原因であると考えられる。

 

仮にどこかの地域で未知の感染症が発生したとしても、世界に拡散するスピードが遅ければその間に対策を講じることができる。時間稼ぎのためには航空機による大量観光客輸送の時代を終わらせる必要があるだろうし、あのウォーレン・バフェットがコロナ以降を見越して大量の航空会社保有株を売却したのも象徴的である。

 

3.子供をできるだけ産まない。

「あなたがまったく動物の肉を食べないヴィーガンになっても、まったく旅行をせずに家に閉じこもっていても、子供が4、5人もいればその効果は帳消しになる」とクオメン氏は語る。

 

地球環境にとって最大の脅威は人類が増え続けることだ。

 

しかし、いくらグレタさんに怖い顔で「How dare you!」と睨まれても、すでに生まれてきてしまった私たちは自殺するわけにもいかないし、現在享受している文化的な生活のすべてを放棄して縄文時代の採集生活に戻れるわけでもない。人間の生活による環境への負荷増大を止めるには、人類の再生産を減少させてその影響を最小限にとどめる消極的な選択しかないのだ。

 

先進国の多くで少子化が進んでいるのは、無意識のうちにこのような選択が働いているのかもしれない。

 

感染症問題とは、つまるところ環境問題なのである。

 

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世界のどの国も同じであるが、私たちには今後、このような感染症による厄災を定期的に何度も受け入れられるだけの社会的余裕も経済的余裕ももちあわせていない。コロナウィルスの脅威がまだ生々しく残っている今こそ、次の災禍を回避するための対策を真剣に論じるべきであろう。