ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

言論と集会の自由が許されたシンガポールのSpeaker's Cornerに行ってみる。

「シンガポールは明るい北朝鮮で、言論の自由はない」としたり顔で語る人がいます。

 

しかし、それは大きな誤解です。

 

シンガポールでは言論や(平和的な)集会は憲法14条で保証されています。内容が日本と違うのは、以下の点。

There are two types of grounds. For the first type, it must be shown that restricting the rights is "necessary or expedient in the interest" of the grounds. The grounds are the security of Singapore and public order (applicable to all three rights protected by Article 14(1)), morality (freedom of speech and freedom of association), and friendly relations with other countries (freedom of speech only). https://en.wikipedia.org/wiki/Article_14_of_the_Constitution_of_Singapore

それには2つの条件がある。第一は、「その利益にとって必要もしくは都合がいいこと」という制限。そして、シンガポールの安全保障、公共秩序(14条1項によって保護される他の3つの権利にも適用)、道徳(言論の自由及び会合の自由)、そして他国との友好関係(言論の自由のみ)を(損なわない)ものであること。

 

 この条項に見事に違反してしまったのが、2015年当時ティーンエイジャーだったエイモス・イー君。故リー・クワンユー元首相やイギリスの故サッチャー元首相をおちょくるビデオやブログを作って公開。さらにイスラム教徒が怒り狂う画像も投稿して、裁判の末実刑判決を受けて服役しました(その後アメリカに亡命)。

 

この事件で、国際社会からシンガポールは大きな批判を受けましたが、私個人としては順当な判断だったと考えています(実刑でなくても良かったとは思いますが)。

 

このように、厳しい条件つきではあるものの、シンガポールには言論と集会の自由があります。そして警察に事前申請して許可を受けてですが、集会を開いていいのがここ、クラークキー駅の出口を出てすぐの場所にある、Hong Lim公園内の「スピーカーズ・コーナー」です。

 

今回、私も当事者であるシンガポールの水処理会社Hyfluxの破たん処理に関する債権者たちの抗議集会が開かれるというので、滅多にない機会を逃さないべく、娘と見物に行ってきました。

 

この問題に関する詳しい顛末は別の記事に書いています。

 

www.mrs-lowe.com

 

開始時間の3時になると、こんな感じで人が集まってきました。

段ボール製の手作りのプラカードやタテカンが素人っぽい。シンガポール人、集会に慣れてないことがよくわかります。この築山がステージ。

 

マイクの前のキャップにマスクの人が主催者。怪しい感じですが、これまでのメールから推察する限りでは普通の社会人で、自分のアイデンティティーを隠すためにこういう恰好をしているようです。またしても慣れてない。

 

隣のスマホいじってる赤シャツの紳士は今回唯一の予定されたスピーカーでしたが、30分ほどにわたって自説を展開し、拍手喝さいを受けていました。

 

集まった人々は、総勢で200人強くらい。メディア関係の人もたくさん来ていましたが、ビデオカメラは持ちこまない約束なのか、普通のカメラとマイクを使わないレコーダーと筆記だけで記者やカメラマンの人たちが取材をしていました。

 

ステージ上の紺のポロシャツ姿の紳士は、聴衆の中から「ちょっと私も話します」と築山に上り、演説していました。基本的に年配の方々ばかりなので、過激な感じはまったくしません。統制された感じもなく、ものものしい警備もなく(隣が交番ですがお巡りさんは誰も来ていませんでした)ゆるーい集会でした。

 

それにしても1時間程度、炎天下の木陰も何もない場所で立ってるのは本当にきつい。

 

あらかじめ想定してピクニックマットを持っていったら、娘、その上で寝込んでしまいました。1時間だったのでまだ我慢できましたが、これで何時間もつき合うのはちょっと無理です。

 

なんとかこの暑さを乗り切り、シンガポールの言論と集会の自由が機能しているのを知り、安心して帰途に着いた次第です。