ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

孤独に殺されないために。

冒頭から暗い話題で恐縮ですが、日本での1日あたり自殺者のピークは4~5月だそうです。気候的には1年で一番快適な時期。新たな環境に胸を躍らせながら入っていく人達が多いいっぽうで、一人悩みつつ死を選ぶ人が増加するのはたいへん残念です。

 

また、自殺とまではいかないものの、孤独な生活を送ることによって心理的なストレスがかかり、病気や死亡の危険性が高まるということは、現在では常識だそう。

 

平均寿命が男女ともに80歳を超える長寿社会になる反面、生涯独身者や高齢者など単身世帯が増えた結果の孤独死や、増加し続ける引きこもりの方が親の死により単身者になるケースも増加。孤独死の場合は男性が7割だそうですが、女性でも、80代以上の女性単身者世帯が2030年には256万人となるというデータもあり、今後増加することが予想されます。

 

こんな時代に孤独にならず、孤独に由来するストレスを回避して心身の健康を保つにはどうしたらいいのでしょうか。

 

まずできそうなのは、できるだけ単身世帯になるのを避けること。自分ではない誰かとの共同生活は面倒ではありますが、共同生活の歴史が長い人間の習性に合致するものだと思います。

 

理想的なのは同棲や結婚して(もしくは同性カップルでも)夫婦2人で暮らすこと。しかしなかなか縁ができない方も多いですし、伴侶と死別したり離別したりした方にとっては、すぐに次の人と、というのも難しいかもしれません。

 

また子どもがいても、核家族が当たり前になってしまった現在では、心情的にも住環境的にも昔の大家族のように子供世帯と暮らすのは難しいことも多いでしょう。

 

そんなケースで少しずつ増えているように感じるのが、兄弟姉妹や甥姪などと暮らすケース。成人した兄弟姉妹が一緒に暮らすのは、日本と同じく独身者が多いシンガポールではごく普通(離婚して再度一緒に暮らすケースもあります)。親が亡くなった後もそのまま独身の兄弟姉妹で暮らし続ける世帯が少なくないばかりか、飲食店など一緒に起業して働いている人も知人にいます。

 

そういえば、小説『赤毛のアン』のアンを養女にしたのも中年の兄妹。高齢になったら畑仕事を手伝ってもらおうと男の子を養子にしようとして、女の子のアンが手違いで来てしまったというストーリー。

 

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先週観たマレーシア映画『光 Guang』も自閉症の兄と一緒に暮らす弟の兄弟愛がテーマでした。

 

いっぽう、甥姪などと暮らすのは日本の知人に多いケース。すぐには一緒に暮らさないまでも養子縁組して老後のいろいろな面倒をみてもらうようにする、と中年のうちから計画して実践している人が多いように感じました。「家」という概念がほぼなくなった現在でも、このような親戚間での互助は大事だと感じます。

 

桐島洋子さんのようにまったく血縁のない方と一緒に暮らすケースもなくはないと思いますが、老後の財産分与のことを考えるとできればいくらかでも姻戚関係があるほうがベターだと私は思います。

 

では、そのような関係を築くことができず、ずっと独居予定の場合はどうするか?

 

私はとにかく意識して自分から外に出ることが大事ではないかと思います。

 

シンガポールで数年間ボランティア活動をしていて感じるのは、以前はコミュニティのワークショップやアトラクションといえば子供向けが圧倒的に多かったのが、最近は子供向けに迫る勢いでシニア向けのイベントが増えているということ。

 

ターゲットとする年齢層が特にないイベントでも、イベント開催中にシニアの(特に)男性が一人で立ち寄ってボランティアに話しかけてくる、という経験をよくします。普段は他人と話す機会がほとんどない人でも、何かのイベントであれば見知らぬ人でも話しやすいもの。ですので、私自身も意識して一人で通りかかるシニア男性に話しかけるようにしています(こちらもそこそこの年なので、相手も話しやすいようです)。

 

地縁でいえば、共同住宅のコミュニティもあります。

 

私が住んでいるマンションでは、以前、2階上に単身の高齢女性が住んでいました。ご主人とは死別し、一人息子家族は香港に移住。もともと香港生まれで長くインドネシアに住んでいたためシンガポールにはほとんど知己がありませんでしたが、我が家も含め、しょっちゅう同じマンションの他の家を訪ねてはおしゃべりしたり、いろいろなことを頼んだりしていました。

 

例えば、役所へ出す書類などの代筆を私の夫に頼んでいた他、同じ階の人には冷蔵庫を借りたり、排水管の掃除までお願いしていたようです。日本人でしたら相手から申し出てもらっても遠慮して断ってしまうようなお願いばかりですが、本人はさして気にする様子もなく、おおらかにふるまっていました。

 

彼女はその後転んで足の骨を折り、日常生活が一人ではままならなくなったため現在は施設に入所しています。いきなり食事時にやってきたりするので当時は少し面倒だなと感じるときもありましたが、今となってはもっといろいろと話を聞いたり、世話を焼いたりしてあげればよかったなと思います。迷惑かもしれないと躊躇せずに人に助けを求めるのは、頼まれる相手にとっても良い経験になると思います。

 

人間にとって孤独とは、目に見えないところで、着実に精神や身体をむしばんでいく恐ろしい病だと思います。

 

思春期はもちろん、成人し、現役から引退した後も、どのように孤独を避け、生涯他の人々と関わって生きていくかを考えて実践するのは大変重要だと思います。