ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

美しく快適な都市に不可欠なランドスケープ・デザイン人材

<国内公園の設計・管理をするNational Parks発行の出版物。こんな小さい国で1000種類以上の植生には圧倒されます。>

 

19歳になる甥っ子が今年高専の建築科を卒業し、2年間の兵役期間後にシンガポール国立大学でランドスケープ・デザインを勉強することになりました。

 

「ランドスケープ・デザイン」といっても、シンガポールの場合は単純に造園というより、ビルそのものの緑化であったり(義妹の話によると「vertical garden」というビル建設時に壁面などを緑化するケースがたいへん増えていて人材の需要も増加中だそう)、商業ビルや集合住宅の設計段階からの敷地緑化プラン策定、そしてNational Parksという国の機関が主導する公園の設計・管理など、さまざまな仕事があるそうです。

 

そのため、ランドスケープ・デザインを専攻する学生は、造園に限らず建築の設計技術も学ぶ必要があるいっぽう、農業や地質など樹木に関する知識も当然必要とされ、何よりもそれらを美しく配置するというデザインの勉強も必須。建築だけの人材と違い、守備範囲が幅広いのが特徴です。

 

また、最近では国内にとどまらず、都市緑化の人材需要が高まる東南アジア諸国や中国など海外でも、このようなスキルをもつシンガポール人は引く手あまただそう。

 

兵役をすでに終えた長男はやはり大学で作曲を学び、次男がランドスケープ・デザインを学ぶことになった義妹は、結婚前にインテリアデザイナーとして働いていた経験をもっています。「まさかあの腕白な息子たちが自分と同じアートやデザインの道に進むとは思っていなかった」とまんざらでもない様子。

 

2050年には世界の都市人口が全人口の約7割になると言われています。

 

電力グリッドやデジタルネットワーク、上下水道、交通網などのインフラはもちろん、これから快適で魅力ある都市を作るためには緑化インフラとその整備及び管理が不可欠であり、その人材を育成していく必要があります。

 

近い将来、建築物の構造計算や地盤の改良計画はAIがやってくれるようになるかもしれませんが、人間が見たり過ごしたりして美しいと感じたり、快適に過ごせる建物や公園は、やはり同じ人間が考えて設計していかなければならないでしょう。

 

豊かな緑の自然が広がる田舎と違い、緑化による都市景観や快適性の維持にはたいへんな手間もコストもかかります。

 

しかし人が精神的にリラックスできる美しい緑の空間があってこそ、コンクリートとガラスでできた殺伐とした大都市ではなく、人と人とがつながり合って生きる豊かなコミュニティを形成することができると思うのです。

 

甥っ子や彼の級友たちがこれからどんどん活躍して、「住んでみたい」と思わせてくれる緑あふれる都市が世界中に溢れるといいなと願っています。