ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

暮らしやすい街は成長が終わってさびれた街?

特に旅好きというわけでもないのに、これまで縁あってアジアや中東やヨーロッパ、アメリカなどの国々などを旅してきました。中には「こんな所に住んでみたいな」と感じる街も少なくありませんでしたが、身体は一つなので実際に住み心地を実感してみることのできる街の数は限られます。

 

シンガポール生活10年目、石垣島生活3年目の身としては、年中暑くて湿気の多い気候に体が慣れきってしまっているので、寒くて乾燥した街には住みたくないなと思いますが、シンガポール出身でバンクーバー在住23年の夫の従姉は、シンガポールはじめ東南アジアの国々は湿気が多すぎて住むに耐えないと言い切ります。

 

しかし昨年、アジア人の憧れの街の一つで、「住みやすい街ランキング」の上位常連だったそのバンクーバーも3位から6位に転落。逆に大阪と東京がそれぞれランク外から3位と7位に浮上。1位は音楽の都、ウィーンという結果になりました。

 

前述の従姉によると、バンクーバーは長年の人気のため不動産価格が高騰し、庶民の手が届かない価格になってしまったそう。そこで、彼女の息子や娘など、今どきの若者たちの夢は不動産が安いロサンジェルス移住なのだそうです。

 

そんな視点からみると、ウィーンや大阪や東京など、すでにめざましい経済成長や都市発展の段階がピークを過ぎ、どちらかというと「過去の街」であること、政治、経済、文化などの面で時代の最先端を走り、華やかな注目を集める街でなかったりすることが「住みやすい街」の一つの条件であるような気がします。

 

「過去の街」が高ポイントなのは、過去の遺産である減価償却済の道路や地下鉄や公共施設などの都市インフラを低料金で使用できる反面、あくせく働いて敢えて新たにお金のかかるプロジェクトに投資する必要がないという、ある意味肩の力を抜いて暮らせる脱力感のおかげかもしれません。

 

私はこれまで大きな街に3度住み替えてきました。

 

最初はバブル前の東京。次が中国返還前の香港。そして1人あたりGDPが日本を超える前のシンガポール。

 

いずれの場合も住み始めてしばらくしてから急速な発展が始まりました。街は世界中からの注目を浴びて驚くべきスピードできらびやかになっていきましたが、住みやすさという点では逆に悪化していきました。

 

人が多くなり、物価が高くなり、人々はいつもお金を稼ぐのに必死で、人間関係がぎすぎすしていきます。

 

特に、ひと昔前の南国らしいのんびりした空気が好きで「あんなところだったら住んでもいいな」と夫とともにシンガポールに移住した(夫はUターン)身としては、現在のあまりにも発展してしまったシンガポールは計算外。数か月に一度は石垣島に帰ってのんびりしたり、マレーシアや東南アジアの田舎に旅行したりしないと息が詰まってしまいます。

 

こちらは、ベルリンの不動産サイトが作成した「ミレニアム世代が住みやすいランキング」というちょっと珍しいランキングを解説したサイト。

tabizine.jp

1位アムステルダム、2位ベルリン、3位ミュンヘン、4位リスボン、5位アントワープと、やはりエッジーというより少し落ち着いた街が好まれるようです。

 

特に若い人たちにとって重要な物価の面からみても、国際的な大企業や国際機関が本社や本部を構えるような街、新しい都市インフラにどんどん投資しているような街は、却って住みやすくないのでしょう。

 

これはリタイア世代でも同じかもしれません。

 

衛生や健康維持の観点から、あまりにも「これから」の街は敷居が高すぎますし、発展・成長真っただ中でぎらぎらしている街もエネルギーについていくのがたいへん。ピークをちょっと過ぎて、「さあ、これからだ!」と気炎を上げる人たちが去った後にこそ、人々の暮らしにやさしい街が残されるのではないでしょうか。

 

早くシンガポールもそうなってくれないかな、と密かに願っています。