ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

朝鮮半島統一は既に規定路線?~ジム・ロジャーズ著『お金の流れで読む日本と世界の未来』

 北朝鮮のキム・ジョンウン委員長が23日、ハノイで開かれるトランプ米大統領との第二回会談に向けて専用列車で平壌を出発したそうで、連日この関係のニュースが流れています。

 

昨年シンガポールで一回目のキムートランプ会談が開かれたときには、目立ちたがり屋のトランプ大統領が核を口実に会談し、世界に顔を売るためのパフォーマンスなのかなと思っていました。

 

なので当時、近所に住んでるニューヨーク出身のアメリカ人でトランプが大っ嫌いなヘーゼルが、いつも会うコーヒーショップでスマホ画面に食い入るようにこのニュースを見ていたのを「核放棄なんて言ったって北朝鮮はどうせ変わらないんだから、騒ぐだけムダだよ」とからかってムッとされたくらいでした。

 

しかし、今回は前回とは違い、だいぶ状況が進展してきているようです。

この本の中でジム・ロジャーズ氏がしきりに気にしているのは、タイトルにあるような日本の未来などではなくて (インタビューを起こした本で、インタビュアーは何とか日本の話題にもっていこうとしてしきりに振るのですがほとんど興味を示さない)、南北朝鮮統一後の東アジア経済です。

 

彼の中ではすでに朝鮮半島統一は既定路線で、それも相当早い段階で起こると考えている。そして、何とかこの機会に生じるビジネスチャンスを活かそうとしているのです。

 

この主張を裏付けるかのように、昨晩のTVニュースでは、韓国のムン・ジェイン大統領が「朝鮮半島統一後の利権を狙う勢力が多いが、最大の受益者は韓国であるべきである」と表明したと、びっくりニュース扱いで報道されていました。

 

こう考えると日韓間で大変な問題になっている慰安婦問題も徴用工問題も、統一後の北朝鮮との一体対応を想定して、わざと日韓間の協定や合意を破棄しようとする動きなのかと勘繰りたくもなります。

 

そもそも北朝鮮の核放棄くらいの功績でトランプ大統領がノーベル平和賞の候補になることは不可能だと思いますので、安倍首相も推薦したという報道が事実であれば、すでに世界の首脳陣の多くは、朝鮮半島統一を前提にした上でポスト統一を念頭に置いて動いているとみるのが自然でしょう。

 

ロジャーズ氏はこの本の中で、統一後の朝鮮半島は日本を凌駕する国になっていくだろうと絶賛しています。その理由として、勤勉な国民性や豊富な天然資源などと並んで「子供を産もうという若い女性がたくさんいる」ということを繰り返します。日本はもちろん、韓国、台湾、そして中国と世界でトップクラスの少子化が東アジアで進む中、北朝鮮の子供をたくさん産む若い女性が救世主になるというのです。

 

統一後に旧北朝鮮の人々が旧韓国の人々のような豊かな生活を求めて懸命に働き、若い女性は70年前の団塊世代の母親たちのようにひたすら子供を産む、という明るいのか不気味なのかよくわからない未来を想像してみますが、ベルリンの壁崩壊時にはどうだったのでしょうか?

 

いっぽう、朝鮮半島統一をメインイベントとした東アジアの明るい未来図は、世界中の国々で借金が膨らみすぎたためのグローバル規模の大恐慌は不可避という主張とセットです。その中には独自の主張である世界経済の重心が少しずつ東に移行しつつあるという説を裏付けるような、ロシアの躍進も含まれます。

 

確かにこの本に書かれているような個々の事象は起こるかもしれませんが、私には中長期のスパンで世界的がどのようにダイナミックに変わっていくかが、あまりはっきりみえませんでした。

 

コモディティ市場や実際の世界の人々の暮らしをベースにした世界の実勢に見識の高いロジャーズ氏が描くビジョンと、AIやテクノロジーの急速に進化する未来ビジョンを明確に持っている(であろう)孫さんのような方が討論したらもう少し面白く、説得力がある本になるのもしれないなと思います。