ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

我慢強く、辛抱強く、麻薬常習者の子どもたちを更生させるために。

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3月半ばから4月頭まで、我が家にステイしていた16歳の姪っ子が、チャンギ刑務所内のDRC(Drug Rehabilitation Centre)に収監されました。麻薬乱用の再犯、4~12か月の実刑です。

 

この問題が発覚した2月半ばからずっと、あちこちに援助を求め、夫と2人で何とか彼女を学校に戻らせて更生させようと動いていたのですが、残念ながら今回その願いはかないませんでした。

 

非常に残念な結果になってしまった要因はいろいろあるのですが、やはり麻薬の強い常習性が筆頭に挙げられると思います。「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」のキャンペーン通り、一度常習者になってしまうと、麻薬を手に入れるためには親でも売るような動物以下の人間になってしまうのが恐ろしいところです。

 

シンガポールでは彼女のケースのように未成年でも実刑を受けますし、最高刑が死刑と日本よりよほど厳しいにもかかわらず、驚くべきことに、麻薬犯罪の年間逮捕者の人口比は日本の5~6倍にものぼります。

 

また、この記事のように、最近では毎日のように摘発が報道されるほど、問題が深刻になりつつあります。

www.todayonline.com

 

一説によると麻薬犯罪の再犯率は80%ともいいますし、特に最近は30歳以下の若年層への広がりに政府が注意を喚起しています。

 

いっぽうで、彼女や、彼女の友人の麻薬常習者たちといろいろな話をしてみると、彼らがこの犯罪にどっぷりはまりこむまでに追い詰められた過程における、いろいろな問題が浮かび上がってきます。

 

概してその大部分は家庭にあるのですが、それ以外にも学校や父兄の無理解であったり、このような子どもたちが働けるような職場環境が少ないなどの問題であったりとさまざま。その多くが繊細で傷つきやすい感性をもっているのも、彼らの共通点です。

 

私がなぜこんな身内の話を書くかというと、この問題が決して芸能人や暴力団など特殊な人たちだけの問題ではないということを知ってもらいたいからです。彼らと話していると、ごくごく普通の家庭に育った子供たちが、思春期の多感な時期に家族と衝突し、同じような境遇の仲間たちとつるんでいるうちに麻薬の罠にからめとられてった過程が手にとるようにわかります。

 

ただでさえ思春期で親も子供自身もたいへんなところに、「いい子」しか受け入れてくれない社会が普通のルートから落ちこぼれてしまった子どもを拒絶してしまうと、彼らは行き場所を失ってしまいます。そこにつけこんで金儲けをするのが麻薬密売組織なのです。

  

さらに言えば、家庭に居場所がない彼らの話を聞き、慰め、世話をしてくれる先輩格の子どもたちもまた麻薬の犠牲者であり、麻薬を買う金欲しさに、親身になって話を聞いてあげた子供にまで麻薬を売りつける売人になっていく、というケースも珍しくありません(この防止策として、麻薬の使い方を教えると罪がさらに重くなるそうなのですが、実際にはやってしまってから知るケースがほとんどのようです)。

 

この悪循環を遮断するためには、どんなに手のつけられないと思われるような子どもたちであっても、彼らを我慢強く、辛抱強く、大人たちが努力して更生させていくしかありません。

 

彼らは心の中では「助けてほしい!」と大声で叫んでいるのに、日々の生活の中では他の子どもたちに麻薬を売りつけるディーラーの自分に甘んじ、偽悪的なポーズで悪態をついてはさらに自己嫌悪に陥っているのです。

 

現在、私たち夫婦は彼女が刑期を終えた後の対応を巡って学校や政府機関の方々と協議を続けています。逮捕されたら一件落着では当然なく、これからが彼女の更生のために私たちが力を尽くすことができる本番であり、さらに困難な道のりであると覚悟しています。

 

そんな私たちにとって最大の救いは、援助を求めて会いに行った国会議員のタン議員が、逮捕とお世話いただいた件の進捗報告についてメールでお知らせした際、すぐ返信してくれ励ましてくれたこと。お願いすればいつでも政府のバックアップが受けられると思えるだけで、心強いです。

 

www.mrs-lowe.com

 

先は長い。でも諦めません。