ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

「万人受け」がテーマの現代アート・ギャラリー、Ode To Art

シンガポールど真ん中のCity Hall駅上にあるショッピングモールRaffles City。ここの1Fにある老舗ギャラリーがOde To Artです。

 

私がシンガポールに移住した2010年にはすでに同じ場所にありました。シンガポールで最高レベルの家賃を払い続けているからには、それなりの利益を出し続けているに違いません。なかなか頑張っているなと久しぶりに覗いてみたら、ちょっと取り扱い作品の傾向が変わっていました。

 

 

以前は、こういう丸っこかったり細長かったりする彫刻と、リー・クワンユーや毛沢東のパステルカラーの肖像画で知られる任振宇(レン・ジェンユー)の作品が多かった印象があるのですが、上掲の写真のような肉厚の彫刻的な絵画がかなり増えていました。

 

 

これらの迫力満点の大作の数々。マレーシア、タイ、中国など多くがアジアの作家たちの作品です。共通する特徴は、現代アートにありがちな難しいところがなく、わかり易くて、不快感や違和感などネガティブなインパクトを与えない作品ばかりだというところ。

 

ウェブサイトをチェックしてみたらその理由がわかりました。

 

odetoart.com

 

このギャラリー、主要販売先が個人というより、ホテルや企業、ショッピングセンター、そして新築高級マンションのモデルルームなど。

 

企業では銀行最大手のDBS銀行や、ショッピングセンターやオフィスビル大手ディヴェロッパーのCapitalandなど、ホテルではフォー・シーズンズやシャングリラ、そして丸の内のアスコット・ホテル東京の美術なども引き受けています。

 

当然、不特定多数の方々が利用する施設ばかりですので、現代アートといっても見る人に不快感を催させるような作品はご法度。会田誠作品などもっての他でしょうし、政治的な意図が透けて見えるものも慎重に避けているはずです。

 

結果として、ユーモラスな彫刻や絵画が多くなったのでしょうが、地価高騰の折、彫刻を置ける大きなスペースが少なくなってきたので、壁にかけられる絵画の形をとっているけれど存在感の強い肉厚の彫刻的な絵画を増やしてきたんじゃないか、というのが私の想像です。

 

サイトにはオンラインショップがあったのでこちらも見てみましたが、数十万円からそこそこ高いものでも2,3百万円程度と、企業が所有するちょっと高級な施設だったら備品として買って減価償却費で落としていくのに大して迷わず決済できるお値段のものばかり。価格設定もよく考えてるなーと感心しました。

 

シンガポールは普通の施設に普通にアートがあるのが普通なのですが、それもこのようなギャラリーがいろいろな工夫をして現代アートの普及に努めているからなのだなと納得。

 

万人受けだけではつまらないですが、名前や評判だけが先行してやたらと値段が高騰するような現代アートとは別に、このようにビジネスとして普通に「お金が稼げる」分野がもっともっと成長して、アーティストたちの育成につながればいいなと思います。