ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

映画評:『クレイジー・リッチ!』~おとぎの国のシンガポールの華やかな人々

シンガポール国立大学のマンスリー無料映画上映会に行ってきました。

 

今月の映画は、2018年のハリウッド映画『クレイジー・リッチ!』。

 

 原作はこちら。

 

シンガポールを舞台にした、貧しい(といっても史上最年少でニューヨークの大学の経済学教授になった超エリート)母子家庭に育ったレイチェルと、シンガポール随一の大富豪の跡継ぎ息子ニックが友人の結婚式出席のためにシンガポールを訪れ(ニックは里帰りだけど本当の目的は彼女を家族に紹介すること)、大富豪たちの愛憎まみえるドタバタ劇に巻き込まれるというコメディー。

 

現代版身分違いの恋の2人の恋愛が成就するのか、それとも2人の仲を裂こうとするニックの母の思い通りに別れることになるのか・・・。

 

アメリカではチャイニーズ系の団体が全米で無料上映会を開いて大ヒットに貢献したそうですが、それもうなずけるのは、とにかくチャイニーズ、華人しか登場しない。舞台はシンガポールにも関わらず、台湾系、香港系、マレーシア系とさまざまな華人たちが登場してきて、メインの英語の他に広東語、北京語、福建語とみながみなそれぞれの言葉を操ります(ただしメインランド、中華人民共和国の人は背景以外に全く登場せず、明確に一線を引いている)。

 

この映画の最大の見所は、ハリウッドセレブなんてちょろいと思わせてくれるくらいの、度肝を抜かれるような超豪華な大金持ちの世界。誠にクレイジー。

 

例えば、人里離れた広大な敷地の中の家に辿りつくまではジャングルの道なき道を進み、やっと門まで辿りついたと思うと武装したインド人(グルカ兵かも)に止められる。大勢の客を招いて超豪邸で開かれる”内輪の”夕食会にはバンドが登場しレストラン並みの数のコックを動員。

 

結婚式前のバチェラー・パーティー。男性たちはヘリコプターで治外法権の国際海域に停泊させた巨大コンテナ船まで飛び、そこで何でもありのどんちゃん騒ぎ。女性たちは離島のリゾートを借り切って無料ショッピング(ドレス選び放題)にエステ三昧。

 

宝石の買い物は超高級ブランドに個室で新作を紹介され、1億円以上するイヤリングを即決で購入。

 

などなど、常軌を逸したお金の使い方がこれでもかと登場しますが、ただのギャグではなくて「あー、シンガポールだったらこれもありかもね」と思わされるところがミソ。世界の果てまで納税義務が追いかけてくるアメリカ人じゃあこうはいかない。まさにワンダーランドです。

 

ビバ、タックス・ヘイブン!

 

その一方で、若い2人の純情な愛と、それを許さない母との葛藤も見もの。

Eleanor Young: There is a Hokkien phrase 'kaki lang'. It means: our own kind of people, and you're not our own kind.

エレノア・ヤン:福建語に「カキ・ラン」という言葉があるわ。意味は、私たちと同じ種類の人たち。あなたはそうじゃない。

Rachel Chu: Because I'm not rich? Because I didn't go to a British boarding school, or wasn't born into a wealthy family?

レイチェル・チュー:私がお金持ちじゃないから? イギリスの寄宿学校に行かなかったから? 裕福な家に生まれなかったから?

Eleanor Young: You're a foreigner. American - and all Americans think about is their own happiness.

エレノア・ヤン:あなたは外国人よ。アメリカ人。アメリカ人は自分自身の幸せのことしか考えない。

Rachel Chu: Don't you want Nick to be happy?

レイチェル・チュー:ニックが幸せになれなくてもいいの?

Eleanor Young: It's an illusion. We understand how to build things that last. Something you know nothing about.

エレノア・ヤン:そんなのはみんな幻想。私たちは物事がずっと終わらないようにする方法を知ってるの。あなたにはわからないだろうけど。

Rachel Chu: You don't know me.

レイチェル・チュー:私のことなんか知らないでしょ。

Eleanor Young: I know you're not what Nick needs.

エレノア・ヤン:あなたがニックにふさわしくないことはわかってるわ。

1MDbより 日本語訳筆者

これぞ華人の神髄! アメリカ人には理解不能。でも華人だったら誰でもわかる。

 

彼らの錬金術の裏にはこのような不断の努力がセットでついてくるのです。日本の封建制なんて足元にも及ばない。

 

そういえば『ラ・マン(愛人)』もそういう映画でした。舞台はベトナムだったけど。理性の国からやってきたデュラスの目には、裕福なチャイニーズの男はただの女々しく無力な人間としか映らない。

 

母役のマレーシア女優、ミシェル・ヨー、黙って立ってるだけでものすごい迫力。怖いです。ケイト・ブランシェットに匹敵するくらいの凄み。

 

最後がどうなるのかはお楽しみ。さすがハリウッド映画と納得のエンディングです。

 

結局、大富豪でも庶民でも、内情はたいして変わらない、というお決まりのストーリー展開ではありますが、この桁外れなおとぎの国の様子を見るだけでも十分観る価値があると思います。

 

セントーサ島の豪邸のガレージにポルシェ数台置いてあるくらいじゃまだまだ本当の金持ちとは言えませんね、シンガポールでは。という教訓もこめて。