ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

モノを持ちたくない社会の向かう先

3/12付ダイヤモンド・オンラインのウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、今年1月から配信が始まったNetflixの近藤麻理恵さんの番組の影響で、アメリカをはじめカナダ、イギリス、オーストラリアなど世界中のリサイクルショップに人が殺到しているとレポートしました。

 

diamond.jp

 

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 こんまりさんの世界戦略に感心した話は以前の記事にも書きましたが、日本のみならずなぜここまで世界中の人々がこんまりさんに熱狂するのか? 私はスマホが出現したときのような大転換期に時代が差しかかっているのではないかと考えます。

 

マイボイスコム社の「イマドキの生活必需品 」調査によると、第1回の2007年から第3回の2018年にかけて、新聞、本、雑誌、テレビなどを生活必需品と考える人の割合が軒並み下がったのに対し、スマートフォンは激増。

 

また、インターネットは6割近くの人が必要と感じています(調査対象は50代~70代が全体の6割以上を占めているので、若い年齢に絞ればほぼ100%と考えていいでしょう)。

 

家庭内のモノでは、炊飯器を除いた冷蔵庫、電子レンジ、エアコンなどが軒並み必要度が上昇。いっぽう車は下げ方が大きくて、第1回の49.3%から第3回の35.7%まで13.6ポイントと激減し、3人に2人以上の人が車を生活必需品と考えていません。

 

特に気になったのは、化粧品が17.3%から12.8%まで下がっていること(女性だけが化粧をすると考えれば単純に割合は倍になりますので、ほぼ10ポイントの下落)。若い頃からお化粧をきちんとしてきた方は年をとってもその習慣を持ち続ける方がほとんどですので、これは若い年代の人の中にお化粧をしない人が増えているという結果だと思います。

 

この調査の結果から浮かび上がってくる現代人の最大公約数のライフスタイルを描写すると、エアコンが効いて冷蔵庫や電子レンジなどが揃った個室の中で1人で快適に過ごし、インターネットにつながったパソコンやスマホを見て過ごすという姿だと思います。まさに引きこもり生活。

 

化粧品の必要度が下がっているのもそのためで、出かけるのは近所のスーパーやコンビニ(必要度高)くらい。 逆に、きちんとお化粧したり車に乗って出かけたりするスポーツ、映画・舞台、温泉などは軒並み低下していますから、わざわざお化粧をする機会もないということでしょう。

 

さらにショッキングなのが、「将来大切にしたいこと」という設問への回答。10年強のうちに必要度が10ポイント以上下がった項目はというと,,,

 

家族 72.7 → 55.9

体力 48.8 → 35.2

愛 43.0 → 29.8

自分 38.3 → 28.1

信頼 34.3 → 22.8

知識 30.9 → 20.2

親友 30.2 → 18.2

人情 24.7 → 14.2

努力 22.5 → 12.5

夢 24.1 → 11.5

 

家族や親友の重要度がこれだけ低下しているのにも驚きましたが、同時に自分や自分自信の体力や知識、努力などへの信頼や期待もゆらいでいるようです。

 

「これがないと生きられないもの」という設問に対する回答ではやはりインターネットやスマホ関連が目立ちました。

 

・スマートフォン。一日の大半の時間で使っているので(男性 18歳)
・スマートフォンと通信インフラが非常に発達していて、スマホ一つで何でもできる時代なので、これらを支えるシステムも必要不可欠だと思う。(男性 24歳)
・知的好奇心を満たしてくれるインターネットがないと生きてる気がしない(男性 34歳)
・スマートフォン、情報の取得は全てスマホによるものであり、情報を取り入れ続けるためには手放せない。(男性 33歳)

 

これらの結果を総合すると、この10年ちょっとの間に、人々の意識はより内向きになり、家族や友人、恋人などという他人とのつながりが薄くなり、逆に、インターネットやスマホを通じての情報やつながりには依存するようになっている。そのため、家の中で最低限快適に生活するための電化製品や食べ物さえあれば、自分を着飾って人に見せるための高級品(百貨店の必需品度はわずか5%)や化粧品などは不要、といったところでしょうか。

 

このようにライフスタイルが変わってくれば、こんまりさんの番組を見て、家の中に積みあがった、これから使う予定のない不用品を捨てたくなる気持ちも理解できるというものです。

 

こんまりさん少しの前にはタイニーハウスがアメリカでブームになりました。

sinlife2010.jugem.jp

多くのモノを持たなければ小さな家でも快適に暮らせます。モノを買わず、小さな家に住み、さしてお金のかからないネット上の仮想現実の世界に没頭していれば、非正規雇用やギグエコノミーの増加で収入が少なくても、さほど大きな不満や不便を感じずに暮らすことができます。

 

ある意味、現実に対する苛立ちや絶望感を紛らわすために、人々の自己防衛本能が働いていると言えるのかもしれません。

 

 
Samsung #DoWhatYouCant Commercial for the Samsung Galaxy S8 and S8 Plus Ostrich

これは昨年こちらのテレビで流れていたサムソンGear VRのCM。

 

砂漠で暮らす飛べないダチョウがGear VRをつけて上空から見た大空の映像を見て以来、飛ぶ練習を続けているうちに実際に大空に羽ばたいてしまった、というストーリーです。

 

もちろんダチョウが飛べるようになるわけがありませんので、それは仮想現実だけの出来事なわけですが、人々も現実世界では狭い自分の部屋に引きこもっていても、ネットを通じてヴァーチャル世界につながっている限り、どんな自分にもなれると暗示しているのです。

 

バーチャルの世界だけにしか自己実現の場がなくなってしまうというのは悲しくもありますが、スマホ革命が世界中で起こった後、このような私たちの意識や生活の変化が静かに進行中であることに改めて気づかされました。