ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

持ち家を買うときには、買える範囲で中古&できるだけ現金で

私がまだ若かった頃、自宅を買う時の価格の目安は年収の5倍と言われていました。

 

例えば年収が500万円の世帯だったら2,500万円、700万円だったら3,500万円です。もちろん頭金も入れての価格。当時は金利が現在と違ってたいへん高かったので、例えば2,500万円を30年ローンで借りて3,500万円の家を買った場合、金利5%でしたらほぼ倍の4,800万円強を返済しなければなりませんでした。

 

時はまさにバブル絶頂。金利も高かったけれど給料もそこそこで、さらに不動産価格は信じられないほど高く、私よりちょっと上の世代の人たちは何とかローンを工面して郊外に新築マンションを買い、その結果として給料の大半を何十年もローン返済に充てなければならなくなったのです(そして現在、都心から遠い郊外のマンションは半端なく値下がりしています)。

 

昔からですが、私にはなぜ多くの人が新築にこだわるかがまったくわかりません。シンガポールをはじめいろいろな国で家を買ったり住み替えたりする友人や知人をみてきましたが、世界的にも日本のように新築にこだわる文化はたいへん珍しいと思います。

 

新築は確かに新しくて気持ちいいものですが、改装でも十分に新築気分は味わえます。

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こちらは私が石垣島で夏だけ営業している古民家を改装したカフェ。買ったときには築50年近いぼろ家で販売価格はゼロ。土地の値段だけで購入しました。

 

それを改装したので整地や基礎工事をする必要がなく、若干の補強工事をしただけですみました。その分サッシやタイルなどに高級な製品を使ったり、もともとはブロックだった塀を石積みにしたり、屋根も漆喰塗りの赤瓦にできました。もし同じ値段で新築の家を建てたとしたら、もっと不便な土地で調度も妥協して選ばざるをえなかったと思います。

 

また、買ってからすぐに使う予定も、改装のための金銭的な余裕もなかったので、数年間は賃貸しして多少なりとも収入を得ることができました。自分がすぐに使わない場合は賃貸し物件としても使えるというのは、中古住宅の別のメリットだと思います(新築の場合は気に入った土地を先に買って持っていても、駐車場以外に貸すことはできませんので)。

 

唸るような額のお金をもっている富豪だったら別ですが、庶民が大きな買い物をするときには必ず予算というものがあるはずです。しかし不思議なことに、持ち家を買うとなるとどうも多くの人が気が大きくなるようで、大幅に予算オーバーして新築の「理想の家」を求めてしまう人は少なくありません。

 

しかし、30年や35年などというなどという長期ローンを組んでしまうと、冒頭の私の友人たちのように一生をローン返済に費やさなければならなくなってしまうことにもなりかねません。現在は夫婦共働きがスタンダードだと思いますが、若いうちはまだしも、中年すぎて子供の学費がかかる一番大変なときに、どちらかが病気になって働けなくなったりリストラに遭ったりしたらたちまち返済に行き詰ります。

 

また、ムリして理想の家を手に入れたとしても、10年もすればあちこち家は傷んできます。憧れの新築もいったん住んでしまえばすでに新築ではなく、価値も一瞬でぐんと下がります。30年、35年ローンの返済が終わるころには大規模なリノベーションも必要になるでしょう。

 

であれば、築年数や広さを我慢しても、駅から近いなど資産価値があまり下がらないロケーションを重視し、できるだけ現金で多く払い、ローン額と支払い年数を最小限にするのが賢い家の買い方ではないでしょうか? そうすれば必要になったときには売れますし、買い替えたいと考えたときにはローンがすべて終わっている可能性が高いでしょう。

 

最近、古民家再生サービスが注目を集めていますが、古い家ほど良い素材や珍しい構造を採用していたりすることは多いもの。私のカフェにも「こんな見事な梁はもう島では手に入らない」と大工さんを唸らせたほどの梁があります。

 

古民家までとまではいかなくとも、何でも新築一番ではなく、ムリない中古、ムリない年数のローンで買える範囲の物件にする。特に都心の新築マンション価格がバブル超えの様相をみせている今こそ、新築・長期ローンの呪縛から逃れて再考してみるべきではないでしょうか。