ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

HRT(女性ホルモン補充療法)経験者が考えるメリットとデメリット

最近、「更年期」という言葉はは50代や60代の女性を茶化したり攻撃するときに使われる枕詞のようですが、更年期は初潮と同じく、女性なら誰にでも訪れる体内ホルモンの変化の時期。私も女性なのでその例にもれず、40代後半から身体のホルモン変化を感じるようになりました。

 

まず最初に気づいたのは、月経の周期が長くなって経血量が少なくなったこと。12歳で初潮を迎えて以来ずっと面倒だった「月のもの」の回数が減るのは、歓迎すべき事態でした。

 

50歳の誕生日を迎える頃にはこれが半年に1度ほど、忘れた頃にやってくる月経ならぬ半年経になっていましたが、この頃気がついたのは、肌の弾力が失われて乾燥し始めたという自分の体の変化です。

 

もともと私の顔はけっこうな脂性だったのですが、顔に油っぽさがなくなって肌が粉をふいたようにマットになり、触ってみるとなめし皮のような手触りに。他の体の部分も同じくかさついて、アトピーでもないのに冬などは頻繁に肌の痒みが出るようになりました。

 

そして同時期に、ホットフラッシュと呼ばれる生理現象、外気温に関係なく突然顔がほてり、汗がだらだらと流れて非常に不快な症状に悩まされることが多くなったのです。

 

若い頃に更年期障害に悩まされる方々に取材して記事を書いたことがあったため、すぐにピンときて婦人科に行きました。血液検査を行ったところ予想通り女性ホルモン値が激減しているという結果。医師が女性ホルモン錠剤を処方してくれました。

 

実は、この時もう一つ処方してもらった薬があります。それは女性ホルモンの座薬。

 

身体全体の肌が硬化して乾燥していくのに伴って、身体の内側でも同じような症状が現れているのを感じていました。特に性交に伴う痛みがひどく、毎回飛び上がるような痛みを我慢しなくてはならないために夫婦の営みを敬遠するようになり、夫との関係もぎくしゃくしがちでした。そのことを話すとこの座薬も出してくれたのです。

 

ホルモン剤を毎日1錠飲み続けることにより、ホットフラッシュがほぼなくなり、肌の柔らかさも戻ってきました。赤ちゃんの肌には比べようもありませんが、それでもハリもツヤも以前よりずっとましです。また、性交痛もしばらくすると座薬は使わなくても大丈夫になり、夫との関係が元通りになりました。

 

どれもこれも女性ホルモン補充療法(HRT)のおかげです。

 

さらに、この治療を始めて良かったと思うのは、乳ガンと子宮ガンの検査を定期的に受けるようになったこと。

 

HRTでは治療の条件として、患者はマンモグラフィー、超音波、細胞検査、内診を1~1年半に毎に受けることが義務づけられています。検査を受けないと薬を出してもらえないため、定期的にこれらの検査を受けることに。ものぐさで自発的には健康診断など受けようと決して思わない身からすると、強制的にこれらの検査を受けさせられるのはガンの早期発見という意味で却ってよかったなと思います。

 

デメリットもないわけではありません。

 

最悪なのは、せっかく長年憂鬱だった月経から解放されそうになったのにまたそれが戻ってきてしまったこと。面倒、の一言に尽きます。

 

もう一つは、月経の間隔が長くなってきた頃に感じた、思春期前の小学生時代に戻ったような精神的解放感が雲散霧消してしまったこと。

 

これは経験者でないとわからないと思うのですが、思春期以来ずっと感じていた孤独感や生に対する執着心や他者に依存したい気持ち等々がぱったりとどこかに消えてしまい、秋の晴天のようなぽっかりとした何もないような清々しさだけが残ったのです。

 

この話を30代で筋腫のため卵巣を全摘し、それ以来ホルモン剤を飲み続けている友人に話したところ「そうなのよー、全ての悩みの元凶はホルモンだったって私もわかったわよ」と全面的に賛同してくれました。

 

更年期や閉経期以降に重いうつ病や精神障害に悩む女性の数が少なくないことを考えると、このようなホルモン量の変化による精神的な変化が良いことばかりではないと思われますが、あの独特の感覚をまた味わってみたいなと思うことがあります。

 

いずれにせよ、HRTの治療を続けるのは60歳まで。それ以降はまた違う方法を考えましょうと医師には言われているので、5年後にはまた体内ホルモンの変化に伴う自分自身の変化があるはずです。

 

日本ではHRTを受けている人が更年期女性のたった3%と、欧米に比べて非常に低いと言われています。

 

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しかし、ホルモン量変動による、身体的、精神的苦痛、そして夫婦関係まで、HRTを始めることによって即刻解消されるような問題は多いと私は思います。

 

自分に合わないと思えば止めればいいのですから、もっと多くの女性がHRTにトライしてほしいなと思っています。