ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

進化し続けなければならない現代アートの宿命

最終日が目前に迫った「Minimalism - Space・Light・Object ミニマリズムー空間・光・物体」展をNational galleryで観てきました。

 

www.mrs-lowe.com

この展示会の一環として先月上映されたドキュメンタリー映画は観ていたのですが、本展は有料なためアートに関心がない夫とアートは好きだけれどまだ現代アートはわからない娘と一緒の時はもったいなくて行けなかったため、ぎりぎりに。ところが13日はオープンハウスで全館無料だったので、あらかじめ知っていれば娘も連れていったのに、と残念でした。

 

説明によると、ミニマリズムとは、1960年代にNYを中心にアメリカで起こったアート・ムーブメント。装飾性を排したストイックな作風をもつ作家たちが代表的で、工業製品に使用される素材を多用するのも大きな特徴だそうです。

 

キュレーションに3年以上かけたというだけあって、ミニマリズムからポストミニマリズム、そしてその流れをくむ作家たちの現代アート作品まで、60年代の代表作に限らず幅広い作品が展示されていました。その中でも特に印象に残った作品は下記の通り。

宮島達男作 Mega Death 1999年

もともと油絵を描いていたアーティストだったけれど、昭和の終わりにLEDに出会って転向。点に見えるのは1から9まで変わっていく数字で、0になると一定の時間光が消えて暗黒に。生と再生の輪廻を表現しているそうです。この作品を一人でじっと何時間もみつめ続けていたら悟りが開けそう。

 

Mona Hatoum作 Impenetable(入り込めない) 2009年

レバノン出身の作家で、1975年にロンドン滞在中に内戦が勃発して故郷に戻れなくなった状況を示唆。鉄条網のように鉄の棘を無数に巻き付けられた鉄線のカーテンにより、向こう側が見通せるのに辿り着くことができない焦燥感を表現。

 

Rasheed Araeen作 (左から)3R+2B(SW) 1971年  Basant(春) 1970年

パキスタン出身でイギリスに移住する前はエンジニアとしての教育を受けた作家だそう。工業デザインとイスラム教の幾何学芸術を融合させた構造的な作風が特徴。パキスタン独立にも影響を受ける。

 

草間彌生作 タイトル? 1961年?

タイトルの写真を撮るのを忘れてしまいましたが、草間彌生の60年代の作品。売れるようになってからの彼女の作品は商業主義が過ぎてアートとは言えず拒否反応が起きますが、この作品は大変美しい。ミニマリズムは60年代という背景もあって仏教や禅思想にも影響を受けたといいます。NYで彼女がこういう作品を描いていた頃、けっこう他のアーティストも刺激を受けたんじゃないかと思います。

 

Ai Wei Wei作 Sunflower Seeds(ひまわりの種) 2010年

これは圧巻でした。景徳鎮で1600人の陶工によって制作されたという磁器製のひまわりの種が50畳はあろうかという広さの部屋にびっしり敷き詰められています(イギリスのテイト美術館所蔵品ですが、テイトでの展示はさらに大規模なよう)。Ai氏は1957年生まれの文革ストライク世代。詩人の両親をもったことにより少年時代をウィグル自治区の労働改造所で暮らし、長じてはアート活動の傍ら社会運動家としても活躍。この作品ではひまわりの種を中国の人々にみたてているそう。

 

美術館の入口にも「もし私の芸術が人々の痛みや悲しみと無縁ならば、『芸術』とは何なのか?」という彼の言葉が掲げられています。

 

と、このように2019年の現在を生きる私の心に突き刺さってくる作品は、やはり世界の現実に正面きって向き合ったものが多いこと、そしてその世界の変化に対応してアートも進化していかざるをえないこと、を理解しました。

 

もう一つは、やはり人が世界の中で動くことにより新しいムーブメントが生まれ育っていくということ。上記に挙げたアーティストたちも、全員が自分が産まれ育った地から離れてまったく違う文化と触れたときにその才能を開花していった人が圧倒的に多い。

 

時代の変遷とともに進化ることと異文化の出会い、がこの展示会のキーワードではないかと思いました。

 

おまけ。

展示会行く前の腹ごしらえ。メニューは本格インド料理からマレー、中華までけっこう幅広いお店でしたが、残念ながら味はいまいち。ロティ・プラタ好きな娘は喜んで食べていました。