ミセス・ロウのシンガポール/石垣島デュアルライフ

50代から二拠点生活。都会&田舎で暮らす。

変わるライフスタイルと変わる飲食業界

イギリスの有名シェフ、ジェイミー・オリバーが経営するレストラン・チェーンが倒産しました。

 

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ジェイミーは20代前半でテレビ番組「The Necked Chef」に登場。コック服はおろかエプロンもせずに普通の家のキッチン(と思わせるようなスタジオ)で料理。普通に友人と会話するようにしゃべりながら数々の本格的な西洋料理を手際よく作る彼の腕前と、ゲストに有名人を迎えてもへつらったり媚びたりせず、田舎の一般人と同じ態度で接する飾らない人柄に多くの人々が魅了されてきました。

 

特に彼の肉料理は絶品。私も日本に住んでいた頃はスカパー、シンガポールに移ってからは地元テレビでジェイミーの番組を観てはマネしてよく作りました。「英国料理はまずい」というそれまでの概念が時代遅れとなった理由の一つが、ジェイミー・オリバーの出現だったといっても過言ではないと思います。

 

その結果、この20年間彼のテレビ番組出演は絶えることなく続き、料理本も次々と出版。記事にもあるように、大企業と組んでのキッチン用品販売やレシピ提供などの事業にも進出してきました。特に、レストラン事業は1,300人の従業員を抱える一大ビジネスになっていたそうです。

 

しかし、時代は変わります。

 

私は行ったことがないのですが、シンガポールにもあるJamie's Italianレストランのメニューを見てみたところ、看板メニューらしきジェイミーのイタリアン・バーガーが38.95ドル(日本円で約3,100円)。これにサービス料と消費税がプラスされると3,600円以上に。サラダか前菜をつけて、ワインやデザートをオーダーすれば、一人1万円近くになる計算です。

 

確かに決して安くない金額ですが、素材にこだわる彼のことですから材料にはいいものを使っているでしょうし、ひと昔前だったら、普通のカップルがドレスアップして年に数回、こんなレストランで食事するのも当たり前だったでしょう。

 

しかし、現在はファッションもファストファッションの時代。お金持ちでもH&Mやユニクロを着てIKEAに行くのが当たり前で、見栄をはるためのファッションは下火に。「食」にもこの影響が出てきています。

 

記事でも触れられているように、最近、Delivaroo(デリバルー)というレストランの料理を自宅に宅配するサービスを提供する会社にAmazonが出資して話題になりましたが、ここ数年、この分野が急成長。シンガポールにもDelivarooの他に、Food PandaやGrabFoodなどの会社があり、利用者が年々増えています。

 

昨年、私が中価格帯のレストランで働いていたときには、これらのデリバリーサービスのオーダーが5~10件に1件くらいの割合とその数の多さに驚きました。

 

普通のレストランでは店で食べる場合と価格は同じですが、家賃とサービススタッフの人件費が不要であれば、当然コストは下がりますので飲食店にとっては悪くないサービス。客席数が少ない店でもこのサービスを使えば大きな売り上げを上げることが可能です。

 

また、デリバリー専門レストランであれば、より質の高い料理をよりリーゾナブルな価格で提供できますので、同クラスのレストランと比較して価格的に優位に立つことができるでしょう。

 

しかし、このような消費者の傾向は、単に価格の問題というより、世界的なライフスタイルの変化の結果だと言えます。中価格帯レストランのデリバリーのみならず、高級料理分野においても、シェフが自宅を訪れて料理をしてくれる「プライベート・シェフ」サービスが台頭しつつあるのです(シェフのランクにもよりますが決して安くはありません)。

 

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日本で引きこもりになる人の数が年々増加していたり、アメリカのショッピングモールに閑古鳥が鳴くようになったのと同じく、現在、ヨーロッパやアジアでも同じような現象が起きつつあります。

 

豊かになるにつれ庶民の車の保有台数が激増したシンガポールでも、車を保有するための権利(COE)を買う価格が昨年末には8年ぶりの低水準(価格はオークションで需給バランスにより決まります)。一時持ち直しましたが、昨日のニュースによるとまた大幅に下がっているようです。

 

これは単に景気の問題というより(シンガポール人の給与水準や物価水準は依然として決して低くありません)、車に乗って外出し、ショッピングや外食を楽しむ、というライフスタイル自体が変わっていると考えるほうが自然です。

 

ジェイミーのお店で働いていた従業員の方々にはお気の毒ですが、レストラン・ビジネスは失敗に終わったとはいえ彼のレシピや料理の腕前にはまだまだ多くの需要があるはずですので、これを機会にまた新たなビジネスの方向をみつけて再出発してもらいたいと思います。

 

 

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